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ローンボウルズの昔と今

「スポーツとお金」考…(2021年春版)

 ちょこっとブログに書くぐらいで語り尽くせるようなテーマではありませんが、個人的に少し考える機会があり、ローンボウルズに取り組むなかでもずっと気にしていることなので、書いてみます。

 私事ですが娘が県立高校に入学して陸上部に入りました。私も40年ほど前に~他県ですが~同じような県立高校に入学して陸上を始めましたので、時代も場所も違うとはいえ、ある程度は「勝手知ったる~」だろうと考えていました。
 むろん、40年前にはインターネットも厚底シューズもありませんし、私の出身県は当時全天候トラックがなく県大会をシンダートラック(この言葉を知っている人は同世代でも少ないでしょう)でやっていましたので、今と大違いのことはたくさんあります。
 ただ、あらためて驚いたのは「予想以上にお金がかかる」ことです。ユニフォーム、ジャージ、ウィンドブレーカ、シューズ(公式競技会に出場するために競技団体が定めた規則に適ったものが必要)に部費などを合わせて、県立高校の年間授業料のざっと8割に相当する額が1年目に要る計算になりました。
 かくいう私も、40年前に自分の親にどれだけ負担をかけさせたかを正確に覚えているわけではありませんが、記憶のかぎり、この3分の1ぐらいだったのでは?と思います。
 けっして今の高校やその部活がヒドイということではありません。きっとどこの高校のどの部活も似たようなものでしょう。ただ、仮に40年前の私が~当時の家庭環境のもとで~いま高校に入ってたら陸上部には入れなかったでしょう。そして、ひょっとすると、現実に今も陸上部に入りたくても入れない~あるいは無理だから最初から入ろうと考えもしない~生徒がいるかもしれない、と想像すると、いたたまれない気持ちになります。

 ひるがえって、ローンボウルズはどうか?です。部活ではありませんが、たとえば高知大学の学生がローンボウルズをやってみたい、と私のところに来たら、という話です。
 やるだけなら「お金はほとんどかかりません」…高知大学には用具類が揃っていますから、体育館用シューズと軽い運動ができる服装があればOKです。
 しかし、ローンボウルズ場に行く、試合に出る、となると、話は違ってきます。もっとも近いところで明石・神戸ですから、朝から始まる大会に出るには前日泊が必要です。1日で終わる一般大会は1泊2日でいけますが、日本選手権は地区予選も本戦もそれぞれ2日間ありますから2泊3日になります。その交通費や宿泊費は選手の自己負担です。
 もっと辛いのは、仮に日本選手権で好成績をおさめたりたまたま好機に恵まれたりして国際大会に出るときです。残念ながら、これまでの実施例でいうと、日本から出場する場合は、自分の居住地から大会開催地最寄りの空港までの交通費等を自弁しなければなりません。つまり国内の鉄道・バスなどから国際線往復航空運賃まで、選手が自己負担するわけです。ありがたいことに一定の条件の下で競技団体が一部補助してくれますが、中国本土ないし香港ぐらいしか補助金で足りるところはありません。本場であるオーストラリア、ニュージーランド、イギリスなどで開催される大会は、大きな自己負担を要します。
 ローンボウルズにとってネガティヴなことを書いているように読めるかもしれませんが、現実を率直に伝えることによって無用の失望を避けたいと思います。他のスポーツなら日本代表派遣費用は競技団体が負担するのが当たり前でしょうから。

 実際、ローンボウルズの取り組み方はさまざまです。大会に出ないで高知でプレーするだけ。海外に行くかどうかなんて考えてない。でもたまには明石に行ってみようか。競技志向で日本選手権に出てみよう。日本代表を目指そう。いや日本代表にならなくても海外の大会に出場できるぞ(私は全豪オープン個人参加でそれをやりました)・・・どんなふうでもいいのです。ちなみに、高知大学では、歴史・文化とともにローンボウルズも学ぶ香港スタディツアーをコロナ禍前に実施していました。
 言うまでもなく、「海外に出かけるヤツが偉い」なんてことは全くありません。あるいはコロナ後の「海外行き」を見すえて「今からお金を貯める」というのもアリです。

 つまるところ、お金をかける/かけないに関係なく、そのスポーツを楽しめれば良いと思います。いろんな人が互いの取り組みかたを認め合って、対等にローンボウルズに接し、プレーしていくことができれば、じつは「お金のかかるスポーツ」であるはず(※)のローンボウルズも、「お金のことを気にせず取り組める」将来性のあるスポーツとして大きく広がっていくものと考えます。

(※じつのところ、歴史上も現在も「ローンボウルズはお金のかかるスポーツ」なのです。この命題については別の機会に詳説します。)